manman official websitemanman official website

楽曲解説

マイノリティ・リポート #06

宇宙人ケッツ 楽曲解説

『宇宙人ケッツ』

この曲は前作の「SUPER manGO!」制作時には既に候補にあった曲で、その時は色々な条件が揃わずお蔵入りとなってしまっていたのだが、今回キーボードのぬまぬまのサポートと歌詞の完全改変を経て、生まれ変わって世に送り出す事ができた。冒頭の語りはmanman学生時代のジャズ研仲間の後輩に声を入れてもらっていて、真面目アナウンス系なら彼女がピカイチだと思ってオファーさせてもらったが、バッチリだったと思う。

この曲の主人公であるケッツは僕が小学生の時に生み出したキャラクターで、まさか20年の時を経て彼の曲ができるとは思いもよらなかった。またこの曲は裏設定が複数存在するので、そちらを中心に解説させていただければと思う。

宇宙は突如現れた巨大なブラックホールに次々と飲まれ始め、皆絶望に打ちひしがれている。そんな中、ケッツはブラックホールを消滅させる破壊兵器「ホワイトホール」を体内に蓄えて宇宙に飛び立つが、途中事故で地球に不時着し、更に記憶を失ってしまう。果たしてケッツは記憶を取り戻し、宇宙を救えるのか?という物語。ここでいう「ホワイトホール」は「おなら」の事で、全てを吸い込むブラックホールに対して、全てを吐き出すホワイトホールで対抗しようというどうでもいい様な裏設定があり、この設定は漫画「キン肉マン」からのインスパイアなので、わかる人にはわかるネタだと思う。また、コール&レスポンスの所の「屁意」という表現は「クレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲」からのインスパイアとなっているので、こちらもわかる人は楽しんで聴いてみてほしい。

僕の歌詞は大体結末がわからないか死んでしまうかの2パターンなんだけど、この曲に関しては僕の中でケッツは最後死んでしまうと思って書いている。かわいそう!という叫びが聞こえてきそうだが(聞こえない)、そもそもケッツは最初母星を飛び立った時に「神風特攻隊」的運命を背負わされている。つまり、ブラックホールへの体当たりである。自分の命を犠牲にして、宇宙を救おうというのだ。彼は最初、物凄い使命感と充実感で飛び立って行ったに違いない。見送ってくれた家族や友人の涙を背に、彼自身は涙を見せず、笑顔で。

それが地球に不時着し記憶を失った彼は地球人から拷問を受ける。ここでは、前述の「自分の命を犠牲にして、宇宙を救う」という主体的な価値観とは逆の、「宇宙を救う為なら、一人の命を犠牲にしてもいい」という客体的な価値観を表現しており、同じ物事でも表現一つで見え方がまるで違うという所も感じ取っていただけたらと思う。

最後は記憶を取り戻し、再びブラックホールを破壊する為に宇宙へ飛び立っていくケッツだが、最後に地球でできた唯一無二の親友との別れを惜しんで泣いてしまう。笑顔で見送る親友を背にして。ここでは最初に母星を飛び立った時と全く逆の状況が生まれていて、これは表向きは親友同士の熱い別れであるが、一方で「犠牲にされるマイノリティ」と「犠牲にならずにホッとするマジョリティ」という面も備えている。涙するケッツが前者で、笑顔で見送る親友が後者だ。きっと地球人は、よくわからない異星人が自分たちの代わりに死んで宇宙を守ってくれる事に心底安堵しているだろう。もしかしたら、安堵どころか何も感じていないかもしれない。テロや戦争が外国で行われていても僕たちはどこかリアリティを感じられないが、外国の人が何も思わない様な殺人事件が隣で起きたら、僕たちにとっては一大事だ。いつか誰かが「人類にとって共通の敵が現れた時、初めて人類は団結できるだろう」と言っていたけど、正に今回、自分たちの身が危ないという状況になり、そこでケッツは都合のいい犠牲だった訳で、彼は世の中に殺されたと言っても過言ではない。それでも彼は飛び立つんだ。ブラックホールを破壊するためだけでなく、争いや人種の違いを超えた、人類の、宇宙の真の救済を願って。

僕も「都合のいい犠牲」としてしか君を見送る事ができない臆病者だが、せめて託させてくれ。ケッツよ、この世界にRevolutionを起こしてくれ!