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楽曲解説

マイノリティ・リポート #05

月夜の晩に 楽曲解説

『月夜の晩に』

「童貞のまま30歳を迎えると妖精になる」や、「魔法使いになれる」など、童貞に関する逸話は数々存在するが、その中の妖精説を取り上げた珠玉の一曲がこの「月夜の晩に」だ。

この曲は、ビルの屋上に佇む童貞が30歳を迎えた瞬間、その0時0分0秒の一瞬だけを表現していて、死ぬ瞬間に流れる走馬灯の様に記憶や想いのイメージを歌い上げる、正に「鮮やかな映画のワンシーン」の様な曲だ。僕の中ではこの曲の歌詞に笑い所はない。自分で言うのもなんだが、美しく、悲しい曲だと思っている。ではなぜ笑ってしまうのかというと、それはこの「童貞」というワードに他ならない。どんなに美しかろうが、悲しかろうが、童貞は笑われてしまうのだ。

そもそも現代の日本ではなぜ童貞は笑い者にされるのだろうか。古代ローマでは童貞を長く守る事こそ美学であり、20歳前に童貞でなくなる事は醜い事とまでされていたらしい。戦前の日本でも結婚するまでは童貞は守るべきという風潮が強く、そういった価値観が崩れ始めたのは戦後以降の話である。つまり僕たちが童貞を笑うのは、単なる現代の価値観に流されているにすぎないという事だ。恐らく現代が、童貞は男らしくてカッコよく、皆の憧れの存在という風潮であれば、誰も笑わなくなるだろう。人間なんてそんなモノだ。

そういった事を踏まえてこの曲をもう一度聴いてみて欲しい。例え童貞の価値観が現代と逆転したとしても、この「月夜の晩に」は変わらず泣ける曲として存在できているんじゃないだろうか。一体なぜか。そもそも童貞というのは悲しい存在だからである。なぜ童貞が悲しいかというと、童貞というのは失われるモノであるからである。童貞を捨てるなんて言い回しがあるが、あれは今の価値観でしか出ない酷い言葉だ。どんな時代であれ、童貞は失われるモノであり、そして二度と戻れないモノである。童貞だった時の想い、女性観、価値観は死ぬまで、否、死んでも取り戻せない。「童貞卒業したぞー!」と喜びに打ち震える君は、実は二度と取り返しのつかない事をしてしまったと言っても過言ではない。

そんな訳で、僕の狙いは童貞を悲しい存在と捉え、それをひたすら追求していれば、勝手に世間の風潮が笑ってくれるという所にある。故にこの曲の主人公は、その風潮の為に死ぬかどうかの瀬戸際まで追い詰められてしまう。彼はビルの屋上から力一杯に飛び出し、妖精として天に舞ったのか。はたまた童貞として転落したのか。後はリスナーの皆さんのご想像にお任せしたい。

ちなみに、この曲の冒頭で語りを入れてくれているのは僕の友人で、当時リアルに童貞だった男だ。このレコーディング後、残念ながら彼女ができて童貞でなくなってしまったけど。(享年27歳)
ぜひ、彼の二度と戻れない童貞の頃の肉声に聴き入ってもらいたい。

色々と真面目に述べたが、こんな曲を作っている時点で、僕自身が童貞を笑っている事は言うまでもない。でもこれだけは言えよう。

どんな男も元童貞。誰もが君たちの童貞でなくなる瞬間に涙し、そして祝福していると。