manman official websitemanman official website

楽曲解説

マイノリティ・リポート #08

空蝉丸楽曲解説

『空蝉丸』

この曲は曲調、歌詞共にかなりの異色作。冒頭のピアノソロ上で流れる蝉の鳴き声は、レコーディングスタジオの近くにある緑道にて録音された、本物の蝉の鳴き声を使用している。

初めこの曲の歌詞ができてメンバーで合わせてみた時、僕は「失敗した」と思った。どんなに切ない内容であろうが、「蝉」という存在がモチーフになっている限り、なんとなく笑えるモノになるであろうと高を括っていたのだ。しかし、出来たモノは真逆であった。普通に「いい曲」になってしまったのだ。でも僕はこれでいこうと思った。それは、僕が蝉を本当に愛しているから。(笑)

とにかく世の中には虫を嫌う人が多すぎる。理由は大抵、「気持ち悪いから」である。もちろん僕だって「なんて気持ち悪いフォルムをしてるんだコイツは!」と言いたくなるヤツもいるが、大事なのはそこで「拒絶」する事ではなく、「許容」する事だ。虫を嫌う人の態度は、「自分と違うモノを拒絶する」という人間の行動をよく表していると思う。また、ためらい無く「殺す」という行動に踏み切れる所も、命を平等に見ない、人間の傲慢さの表れだ。というか、そもそも虫がいないと人間は存在しえないという事をきちんと理解しなければならない。遥か太古の昔からこの地球に存在し、偉大なる食物連鎖の礎となっているこの大先輩たちに、僕たちは感謝しなければならない。この曲は蝉の一生を描く事で、虫を嫌う人たちに彼らの命とその大切さを感じてもらいたい、という願いも込められている。まぁ僕もゴキブリは殺すけどね。ウチはもっぱら新聞紙スタイルです。

数いる虫の中で蝉をテーマに選んだのは、彼らの一生には他ならぬ「生き様」を強く感じるからである。蝉の一生は、成虫してから一週間だとか一ヶ月だとか説があるが、とにかく短い。限られた短い時間で、ただただ子孫繁栄の為に交配できる相手を探し、それを終えたら死んでいく。ロマンチックに言えば、運命の相手を探す、という事だね。なんてシンプルなんだろう。「生きる」とはこの事以外にないんじゃないんだろうか、と思えるほどシンプルだ。僕は思うが、蝉の鳴き声があんなに大きくてうるさいのは、命がとても短くて、その限られた時間を全力で、一生懸命に生きたいからじゃないだろうか。きっと一生分の全ての叫びが、一週間に詰め込まれているんだ。こんなに人生、否、蝉生を大切にする彼らは、本当に素晴らしい。

そんな蝉たちの中でも、この空蝉丸はマイノリティに属してしまう。一生懸命に鳴き続けても、彼に運命の人は現れない。前述した「生きる目的」すらも、彼は世の中に否定されてしまうのである。そんな時、彼を救えるのは感情や思考を持つ人間だけなのだ。僕の様に歌にしたり、単純に「かわいそう」と思ってあげたり、「お前は一生懸命生きたよ。」と彼を労ってやれるのは人間だけだ。蝉を嫌う人間だけが、蝉を救う事ができるんだよ。この曲を聴いた人が、「蝉って実はかわいそうだな」と思うか、「なんだよこの曲、蝉とか気持ちわりぃ」と思うかはわからないが、僕はこの曲で人間が変われるという可能性を、本気で信じているよ。

夏の終わりにたった一匹で鳴いている、否、泣いている蝉がいたとしたら、それは空蝉丸だ。人に想いを託し、永久に響け、空蝉丸の唄よ。